この香りで惑わせて



 いつも以上に彼は車を飛ばし、あたしの家に辿り着くと、シートベルトを外した。


 いつも、彼はシートベルトを外さないのに、さらにこう言う。


「今日、泊まってもいいかな?」


 あたしは、思わぬ事態に口がきけなくなり、頷くことしかできなかった。


 頭はぼんやりとして、彼に導かれるまま車を降りて部屋へと向かう。


 彼は焦っているみたいに速足で、あたしは転ばないようにするだけで精一杯だった。


 部屋に入れば緊張は高まり、とつぜん変わった彼に戸惑った。


 真っ直ぐに寝室に向かい、ベットに軽く押される。



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