茉莉花の少女
第23章 婚約者
 僕が連れて行かれたのは少し離れたところにあるマンションの一室だった。

 そこには長身の男性の姿があった。

 僕より少し身長が高い。政略結婚のようなものを企んでいるくらいだからどんな男だろうかと思っていた。

 けれど、僕が彼女を好きだという気持ちを省かなくても彼女には僕以上に似合っていることだけは分かった。

 彼は僕を見て、目を細める。

「君が久司君か」

 その穏やかな話し方は彼女の父親に似ていると思った。
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