茉莉花の少女

「だから婚約をしたのか？」

　茉莉はうなずいた。

「でも、その後、言われたの。秋人さんに。自分から婚約を解消するって。

本当はそのつもりだったから気にしなくていいって。自分のせいにしてしまえば火の粉が飛ぶこともないからって」

　彼女は言葉を搾り出すようにそう告げた。

　僕の脳裏に過ぎったのは悲しそうな彼の瞳だった。

　もしかすると、それがその瞳の真実だったのかもしれない。

「でも、嫌いじゃなかったから、あの人を傷つけたくなかった。どうしたらいいのか分からなかったの」