茉莉花の少女
 そういった面では信用できる。

 一昨日まで知らなかった女が大好きだというほうが嘘臭い。

 一目ぼれとかそういった特殊な事情があるかもしれないが、僕にいたってはそんなことはない。

「少しはいいと思ったりしなかったのか?」

「ないよ」

 僕は窓の外を見た。

 今日も嫌なほどいい天気になりそうだ。

 ただ、彼女の存在があまりに眩しくて、自分とは違う存在であることを痛感させられていた。

「茉莉先輩の家って金持ちらしいけど、そんな素振りも微塵とみせないからな」

「そうなんだ」

 ますます僕とは全く違う世界の人だと思った。

 父親の財産のことが一瞬頭を過ぎり、失笑する。

 これではあの女と同じだと思ったのだ。

「で、成績も学年でトップクラスなんだってさ」

「お前、やけに詳しいな」

「そりゃあ、三田はずっと茉莉先輩に憧れていたからね」

 その言葉とともに現れたのは奈良だった。

 彼は僕と三田を一瞥すると、そのまま自分の席に向かう。
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