茉莉花の少女
第8章 家
 人に家に行くのが大嫌いだった。

 小学校に入る前に両親は離婚していた。

 家に帰ると、母親がいないことがただ寂しかった。

 そして、一人なんだと分かった。

 誰かの家に行きくと、ほとんどの人があたたかく迎えてくれた。

 その笑顔は僕の母親にはないものだった。

 父親にも祖父母にもなかった。

 歓迎されているとわかる笑顔だった。

 友達の家でそんな笑顔をされると、悲しみが増すだけだった。

 僕は一人ではなく独りなのだと痛感させられる笑みでもあった。
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