言葉にできない。

千鳥にとって、結婚は夢だった。


母親が不倫の末自分を生み、結婚しなかったために結婚というものがどういうものなのか、よくわからなかったからだ。

夢見るだけでいいもの。



なのに。


隣でぎゅう、と手をつなぐ男が言うのだ。


ーお嫁さんになってくれる?ー



自然と涙が落ちた。


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