学芸員の憂鬱

「…知らなかった…」

「うん。尽君が合格して入学すれば後輩になるんだよ…」

「いや…それもだけど…人に歴史あり…みたいな」

「ああ…教員免許?本当に持ってるだけ…短大のオマケ程度だよ…侘助さんと違って私は実習が楽しみだったんだよね」
雨衣は奈良の短大からの三年次編入でこの街に来たのだが編入先が尽が志望する大学である事が分かった。

「今の仕事と全く違うジャンル…」

「でしょ?それも私…普通校じゃなくて支援学校に実習に行ったんだよ。楽しかったなぁ…」

「家政学部から民俗学に編入って事だよね?」

「意外に共通してる部分が多いなって思って。衣、住、食には今も昔も無いでしょ?電化製品が出来て火おこししなくていい…とか水汲みしなくても水道から水が出る、レトルト食品が手軽…とかはあるけど」

「そう言われると衣、住、食は人間とも歴史とも関わりがあるかも…」

「そう。あの武将や幕末志士が好んで食べた料理とか、今じゃ考えられない物が薬として珍重されてた…とか、石器時代から近代までの調理器具とかの進化も面白いな…って思って」

楽しそうに話す雨衣を見て尽は笑う。

「あ?今、笑ったでしょ?」
自分ばかりが話している事に気付いた雨衣が顔を赤くする。

「いいや。で…今じゃ考えられない薬って?」

「真珠やミイラを粉末にした物」

「ミイラ??真珠なら…まだわかる気がするけど…」

「まぁ…どっちも滋養剤として珍重されてたんだけどね…真珠は天下統一まで長生きしなきゃいけないから…って徳川家康も服用してたらしいし…」

「日本でミイラ?」

「シルクロードとか通ってピラミッド辺りから来たんじゃないかな…その辺は侘助さんの方が詳しいよ」

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