愛を知らないあなたに
痛いとさえ思うほどの視線。


視線だけなら、鬼だけど。でも・・・




「俺が鬼に見えないと言いたいのだろう?」



まるであたしの心を読んだかのように、鬼はさらりと言った。


得意がるようでもなく、無表情で。

やっぱり声は、絶対零度。




その、あまりに感情の無い姿に、あたしの心は震え始める。


何を考えているのか、全く分からない。



怒っているのか面白がっているのか悲しんでいるのか・・・

全く、全然、分からない。





鬼は疑問系で言ったのに。


聞かれているという感覚が、しない。




そして鬼は、あたしが答えなくてもさらりと説明した。


なんでもないことのように。

どうでもいいことのように。



「俺は鬼と人の間に生まれたから、人のようにも見える。

だが、力は普通の鬼となんら変わらない。忘れるな。」



何の感情も込められていない言葉達。


けれども、暗に鬼が“俺をなめるな”と言っているように聞こえた。





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