愛を知らないあなたに
「早いな、生贄。」



考えていたら、頭上から声が聞こえた。


顔を上にあげれば、やっぱり無表情の鬼様が立っていた。



「あ、おはようございます・・・。」


あたしは慌てて膝をつき、手を膝の前に合わせた。



「あぁ。」

鬼様はそう一言返し、あたしの前にしゃがんだ。




「お前、腹はすいているか?」


「へ?あ、は、はい・・・。」


「そうか。では、何か持ってこよう。」



鬼様はスッと立ち上がり、音も立てず奥へと行ってしまった。


あたしはとりあえず、布団をたたむことにした。

じっとしていると、不安がむくむく押しあがってくるから。



「う、んしょっと。」


まず、敷布団をたたみ、隅の方に運ぶ。

次に、掛け布団をたたみ、敷布団の上に置いた。



うん。

我ながらよくできたと思う。


満足していると。




・・・・・・背後に何かの気配を感じた。





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