愛を知らないあなたに
「いや、いい。」



首を振り、足を踏み出した――が。





「あぁ、凜ちゃんのとこ行くの?」



その言葉で動きが止まった。

振り返り、ニヤニヤしている薺を見る。




「なぜ分かった?」


「あ、やっぱそうなんだ。」



薺はあっさり頷き、にやつく。


「いやぁ、勘(カン)よ、勘。女の勘。」


「そうか。女はすごいな。」


「・・・・・・そこであっさり納得しちゃうのが琥珀らしいわよね。」



呆れたように薺がいい、しっしっと右手で俺を追い払う仕草をした。



「行きなさい行きなさい。

あたしちょっといじりすぎた・・・っていうか、妬んで当たっちゃったから。

少しどころじゃなく悪いコトしちゃったから、早く行って慰めてあげて。」


「それならお前が謝るべきじゃないのか?」


「でも琥珀、今すぐ凜ちゃんのとこ行きたいんじゃないの?」




ぐっと詰まった。


言い返せない。




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