愛を知らないあなたに
利用?浅葱さんが?



「何それ。意味わかんない。

浅葱さんに利用されたことなんて、一度もないよ?」


「気づいてないのか。まぁ、当たり前か。

アイツが悟らせるはずない。」


「何を根拠にそんな・・・」


「お前が俺のことを知らなかったからだ。」


「え・・・?」



眉をひそめたあたしに、元仮面男はかすかに微笑んだ。

慈愛をたたえたようなその微笑は、ひどく浅葱さんと似ていてーー


思わず、息を呑んだ。




「何も知らない、憐れで愚かな小娘よ。

教えてやろう、全てを。」



柔らかな、どこまでも浅葱さんと似た笑みに、不覚にも足がすくんだ。

美しい翡翠の瞳から、目が離せない。






そっと。

白く長い指が、あたしの額に触れる。




優しげに目を細めたまま、誘うように、彼は囁いた。




「ーーお眠り。

そうして・・・・・・






絶望しろ。」







あたしは、ゆっくりと。

真っ暗闇の世界に、落ちていった。




ーー全てが闇にのまれていくなかで。

微かに、元仮面男が持っている四つ葉のネックレスが、光った、気がした。




< 359 / 377 >

この作品をシェア

pagetop