愛を知らないあなたに
いや、そもそも今までの生贄は腹が減らないと言っていた。


何も食べたくないと。

どうせ死ぬのだと。




それなのに――





「はぁー!美味しかった!

鬼様、ごちそうさまでした。」



なぜこの生贄はこうもニコニコしているのだ。





「鬼様!!!では、どうぞ!お食べください!」


そしてなぜ、どんっと自らの胸をたたいて、俺を見ている。




「・・・・・・・・・何を食べるのだ。」


「あたしをです!!!」



俺は生贄をじっと見た。

漆黒の瞳は、怯むことなく俺を見返した。



違う。


やはり、こいつは違う。

今までの生贄と、全く違う。





自ら・・・食べろと言ったのは、こいつが初めてだ。


怯むことなく俺を見返したのは、こいつが初めてだ。





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