バニラ
冬の月の香り
「輝明兄ちゃん、ココわかんない」


千尋は向かい合わせたテーブルの上に突っ伏して、シャープペンをカチカチ鳴らし、考える素振りゼロで上目遣いにオレを見る。


「千尋、問題解く気、ねぇだろ?」


「うん、ナイ」


「あのな、受験まで1ヶ月切ってんだぞ」


オレのその言葉に、千尋は大きな溜め息だけで返事をした。
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