バニラ
「ねぇ?輝明兄ちゃん?」


「ん?」


「あたしって、子供かなぁ…」


潤んだ瞬きに胸が苦しくなる。


その苦しさにオレは逆らえず、震える手を千尋の頬にそっと押し当てた。


「なんでそんな事聞くんだ?」


「子供ならおねだりできそう、大人なら届きそう、そんな気がするの」


「何か欲しいモン、あるのか?」


頬に当てた手に千尋のぬくもりを感じつつ、オレはその手をゆっくりと唇に這わせた。


小さな唇がオレの名を呼ぶ。
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