嫉妬の威力

「果乃ちゃーん!おはよー」

実穂さんに『おはようございます』と頭を下げてから彼を見ると、苦笑いして頷かれたので助手席から降りた。

「キャー果乃ちゃん今日もかわええのぉ」

実穂さんに頬っぺたをふにふに両手で引っ張られて変顔にさせられる。

「みひょさん…いたゃいれす」

「この変態オヤジ、果乃に触るな」

彼の仲良し同期の一人、秘書課の実穂さんは
クールビューティーな外見からしていかにも仕事がデキる美人秘書って感じなのに、中身は残念なことにオヤジそのもの。

お洒落なワインが似合いそうでも、飲むのはいつもビールだし煙草も美味しそうに吸う。

何故かオヤジにだけはモテる私は、中身がオヤジな実穂さんのハートを出会ってすぐに射止めてしまった。

かわいいって言いながら小動物のように私を扱う実穂さんだけど、最近は相談に乗ってもらう頼りになる姐さんな存在になっている。


「煩いわね、果乃ちゃん北川とはいつ別れる
 の?私もっといいの紹介してあげるよ」

そう言って実穂さんは自分の担当食材を彼に押し付けると私の手を引っ張って行く。

「ふざけんなよ!おいっ実穂!」

「あ、あのっ」

振り返って彼を見る私に実穂さんは前を向いたまま言った。

「いいのよ、これで私も一緒に来たように
 見えるでしょう?」

「あっ」

「せっかくいいお天気だし楽しくやろうよ」

『ね?』って言われて、申し訳ないと思いつつ彼を振り返るのを止めて笑顔で頷いた。

昨夜焼き鳥やさんで愚痴ったこと、ちゃんと聞いててくれたんだ。

決して流行りのお洒落な焼き鳥やさんではなく、オヤジばかりの立ち飲みのお店で私にハツとかカシラとかボンジリとかを注文させて楽しんでるだけかと思ったのに。

「実穂さん、ありがとうございます」

「いいのよ、あたし北川を苛めるの趣味なの
 今日も何かあったら痛い目みせてやるわ」

「えっ、それって…」

どういうことでしょう?

恐々実穂さんを見ると、満面の笑みが返ってきてブルッと身震いした。

その笑顔怖いです。

「さて、涼しいとこに逃げるとしようか」

もう何も聞かない方がいい。

「はい」

実穂さんの後に素直について行く。

これからバーベキューの前にバレーボール大会が開かれる。

昨日の会話の中で実穂さんは『絶対にバレーボールなんてしない』って、たらふくビールを飲んでいた。

おそらく二日酔いだと思うけどそれを指摘したら私だけ参加させられそうだから黙っている。

運動音痴…特に球技が苦手な私だって絶対にバレーボールは嫌だ。

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