不条理な恋でも…【完】
それでも、心の全てを独占できたわけじゃないのはわかっている…

君の心の奥にある眞人の存在を消すことは最初から諦めていた。

それほど俺はほのかに対しては弱気だった。

妥協したって、我慢したって必ず手に入れたい存在だった。


俺の存在で上書きしてやるなんてとても言えなかった。

その想いを否定することは君自身の人生の生き方全てを

否定することになるのだろうから…

あの頃不毛な片思いをしていた俺のほのかに対する思いを、

その当時否定するのと同じだろう。

それをわかったうえでプロポーズをし、結婚したはずだった。


でも人はつい高望みをしてしまう…

手に入れられない物ほど欲しくなる…

まだ躰すら手に入っていないのに、ほのかの全てが欲しい。

ほのかの愛情の全てをためらいなくひとかけらも残さずに、

俺に捧げて欲しい…

俺と同じだけの愛情を返して欲しい…

そうしてくれたら、俺はほのかの返してくれるもの以上のものを

与えようとするのだろう…

そう思うのは贅沢なことなのだろうか?

思うくらいは許されないのだろうか?


傍らのほのかの豊かな黒髪そっと撫でた。

今は、こうやって触れてほのかの存在を確かめることができるようになった。

それだけでも俺は本当に幸せだと思う。


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