不条理な恋でも…【完】
バタン…

ドアを開けて見回すと、さっき寝ていたソファーからほのかの頭が見えた。

その姿を見つけて、思わずほっと息を吐いた。

ゆっくりと歩いてソファーに近づく。

背後から回り込んで正面に立つと、ほのかはこちらを見上げた。

お互いの視線が絡み合い、火花が散った気がした。

そのまましばらくの間ただ見つめ合う。先に視線をそらしたのは俺の方だった…


俺は何をしているんだ。必要以上にほのかに緊張を強いてどうするんだ?

視線をそらしてから、俺はあえてほのかの隣には座らず、

君の足元の床に腰を下ろした。

「ありがとう」

俺はTVのある方を見たままほのかに礼を言う。

「…」

「これ、わざわざ俺の荷物から出して用意してくれたんだよな?」

俺は部屋着を摘み上げ、君の方に振り向いた。

ほのかが柔らかく微笑んだ…

「慣れたものがいいんでしょ?短い出張にまでいつも荷物に入れていたから、

今夜もこれがいいのかなと思って…」

「ああ…

お前も入ってこい。どこか外で食事でもと最初は思ったりもしたが、

俺もこれを着てしまったから、

今夜はここでルームサービスでもとってゆっくりしよう」




< 30 / 65 >

この作品をシェア

pagetop