不条理な恋でも…【完】
でも、怯えさせたいわけじゃない。

ましてや俺に抱かれることで恐怖を感じさせて、

あの時のように壊してしまいたいわけじゃない。


「私は…

私は…」

ほのかが言いよどんだ。今夜はやっぱり…

無理だろうか?予想できたことではあったが、

それでも俺は食い下がり懇願した。


「できれば…

俺の愛を信じて、俺の全てを受け入れて欲しい…」

それは信頼関係が最も大切な媚薬。

どんなに手慣れた技巧を尽くし快感を引き出せたとしても、

それがなければただの強姦だ。

ほのかだけは、ほのかとだけはそういう交わりをしたくなかった。

俺は今夜、彼女の中で果てることができるのだろうか?

待ち望んだ彼女の全てに触れることが許されるのだろうか?


俺の言葉にほのかは何も言ってくれず、何も反応してくれかなかった…

恥を忍んで懇願までしたものの、やはり自信はなかった。

沈黙が続くということは…

やっぱりそういうことなのだろうか?


徐々に希望が失われそうになりながら、

それでも応えてくれるのをただひたすらに待つ。

俺の想定を裏切って目の前のほのかの表情が徐々に明るくなり、

ゆっくりと頷いてくれた。
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