不条理な恋でも…【完】
「私、男性恐怖症だった時があるんです。

それなのに何も考えずにこんなところに来たりして…」

初対面の相手なのに優しいしぐさに涙が零れた。

「…診察代はお支払するので、このまま帰ってもいいですか?」

「わかったわ。ちょっと先生と話してくるけど一人でも大丈夫?」

「はい…

お願いします」

看護師は私から離れて奥に入って行き、話し声が聞こえた…

その日、そのまま別の部屋のベッドで休んでから家に帰れた。

結局きちんと診察できなかったんだからと料金は請求されなかった。


その後…

私はネットで内診がどんなものかとか、不妊について色々調べた。

それから…

とりあえず女医さんのいる病院に行った。

色々検査してもらったが…

結局特に問題になる原因は私には見つからなかった。

『ということは、ご主人の方かもしれないですね』と言われたが、

そんなことを、大希さんにはとても言えなかった。


先生に色々聞いてきたことを大希さんに気が付かれないように試した。

黙ってコソコソしている自分が後ろめたくて…

生理が来るたびに辛かった。


数か月に1度病院に行ってそんなことを繰り返していたある日、

私は慎重にしていたつもりなのに、病院でもらった資料を

テーブルに置き忘れ、それを大希さんに見つかってしまった。
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