不条理な恋でも…【完】
ほのかは目を閉じ、花束を抱きしめその香り感じているようだった。

その仕草ひとつひとつに、俺の心はときめいた。

これでやっとほのかを…

でもさっき聞いた『どうして…、まだ…』という言葉が引っかかる。

彼女の口から紡がれた答えは、やはり俺の望むものとは微妙に違っていた。

「たいきさん。花束ありがとうございます。

本当にありがとう…

こんなに色々と心を砕いて、大切にしてくれているのに…

それでも私は今、まだあなたにありがとうしか言えないんです。

こんな私で、ほんとうにごめんなさい」

花束を抱えたままほのかは頭を下げた。


まだ早すぎたのか?踏み込み過ぎたのか?

俺の戸惑いをよそに、ほのかは頭を上げることはなかった。

それはほのかが真正面から俺の気持ちに

向き合ってくれている証拠だと思った。


上がらない頭…

ぼたぼたと雫が床に水玉を作る。その数が徐々に増えてきて、気が付いた。

また泣かせたのか…

『ごめんなさい…』

俺は玄関の中に踏み込みドアを閉めると、頭を下げたほのかを抱きしめた。

「もういい…

俺が無理強いして悪かった…

もういいから…」


この時からほのかは幻覚で錯乱する以外、俺を拒絶しなくなった。

抱きしめて、頬やおでこに優しくするくちづけは受け入れてくれた。

でも俺に対してはっきりした愛情を示すことはなかった。
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