青春を取り戻せ!
「勿論四人です。さっき言った水島高嗣と阿木務と白木ご夫妻の」

「もう連絡済みですし、確定したことなので、そのような変更はでき……」
僕は、彼が言い終わる前に四つにたたんだ福沢諭吉を手の中に握らせた。

青年はそういうことには馴れていないようで、落ち着きのない目になると、まわりを見回し、人がいないのを確認するとズボンの中に突っ込んだ。

「しょっ 少々お待ちください」

青年はまた奥に引っ込んだ。

「水島様と阿木様と白木御夫妻のパーティーは12日の9時30分、アウトコースからのスタートにさせていただきました」
「ありがとう」


僕は刑務所内で仲良くなった詐欺師の柳沢に連絡を取り、翌日から大手製薬会社の営業課長に成り切る教育と、ゴルフのレッスンをはじめた。

彼はゴルフをかじったことがあるとうそぶいていたが、醜いものだった。

何とかアウト・サイド・インのビギナー・スイングをイン・サイド・インに直し、ショート・アイアンだけは人並みにさせた。

僕のほうはわざと下手にしなくてはと思っていたが、その必要はなかった。7年間のブランクがビギナーに毛の生えた腕前に変えていた。
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