二重螺旋の夏の夜
とりあえず食べられるであろうそれを皿に移して、炊飯器に残っていた冷めきったご飯も茶碗によそった。

箸も一緒にテーブルに運んで、ソファに座ってテレビをつける。

報道番組にチャンネルを合わせようとしたが、どの放送局でももう終わってしまっているようだった。

仕方なく一番静かそうなドラマを選んで、夕食(のようなもの)を食べ始めた。

…味が薄い。

塩コショウをもっと振っておくべきだったか。

やはり桜は料理がうまかったんだなと、しみじみ思った。

「やり始めたら奥が深くてハマっちゃうんだよね」と本人は言っていたが、それは料理以外のものに対してもそうらしい。

どこか職人気質みたいなものや、内に秘めてる何かを持ち合わせているようだった。

だいたいあいつは――

不意にケータイが震える音がして、顔を上げた。

箸を置いて立ち上がり、机の方に向かう。

かばんの中から取り出して画面を見ると、桜からのメールを受信しているようだった。

開いて本文を読む。

その瞬間、血の気が引いていくような感覚がした。

急いで追いかけなければ。
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