二重螺旋の夏の夜
「大丈夫?」

今年の6月の初め頃だったか、会社の廊下ですれ違ったときに声をかけられた。

「…何がですか?」

不思議に思ってそう尋ねた。

「んー?いや、不安そうな顔してるから。しわ寄っちゃうよ」

すると早見さんはわたしの眉間を人差し指で小突いて、優しく笑った。

それから早見さんは、なぜかやたらとわたしを心配するような声をかけてきてくれた。

「ほら下向いてる。おはよー」

「昨日はよく寝た?」

「顔色良くない!ちゃんと飯食ってる?」

あるときは「ほい、元気の出る薬!」といっていちご味の飴を手渡してくれたこともあった。

その度に「大丈夫です、ありがとうございます」と言っていたのだが、ついに1週間前、「いや、大丈夫じゃない」と返されてしまった。

「いえいえ、本当に大丈夫ですよ」

「ダメ、聞こえません。今日の夜、ごはん行くよ!」
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