二重螺旋の夏の夜
「兄ができたみたいで」

あれ、兄…?

アニ…?

ANI…。

「……」

「あっ、すみません、そんな失礼なこと…」

「いや、全然。むしろ俺も嬉しいから」

口はそう動いたものの、呆然という感覚をこんなにも体現しているのはいまだかつて俺しかいないのではないかと思う。

「あの、ごはん…是非お願いします」

「わかった。あ、ごめん、すぐにかけ直すね」

井口がいい加減にしろ、とでも言いたげな顔で舌打ちをし始めたのもあって、一旦電話を切った。

「神崎、何だって?」

すかさず飛んでくる質問。

淡々と、味気なく言葉を返す。

「俺のこと、兄みたいだって…」

「くっ…」

「?」

「ぶっ、ふぁははは!」

井口は馬鹿にしたような表情で、吹き出して笑いやがった。

「どんな笑い方だよ」

「ざまぁ!」

「うるせぇ!」

俺だって笑いてぇよ!

何なんだよこの状況は!

…でも食事断られなかったし引かれてもなさそうだし、好転するのを少しは期待してもいいのではないか、とも思う。

気持ちが全部聞こえてしまっていても。

兄みたいだと思われていても。

希望はある、と信じたい。

そうだ、とりあえず次に会う予定を決めなければ。

そこからゆっくり、進んでいければいい。

手帳を開いて再び電話を手に取ろうとすると、井口が小さく「含み笑いキモい」と言ったのが聞こえた。



------------------------------



【おまけ】

「ちなみにさ、俺らの会話ってどの辺から聞こえてた?」

「すみません、周りの音が大きくて全然何言ってるのか聞こえてなかったんですよ」

「えっ!?あ、あぁ、そう…」

(つまりは俺が井口に恥を晒してしまっただけってことか…!)
< 51 / 51 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:39

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

ポケットの中のパノラマ

総文字数/2,112

その他1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
------------------------------ キラキラしたかけらを 拾い集めては ポケットにしまっていた ------------------------------ ※ショートストーリー置き場です。 ※勢いだけで書いてます。 ------------------------------ 2014.09.01 公開 ------------------------------
駅のホームとインディゴブルー

総文字数/25,044

恋愛(その他)42ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
------------------------------ 速度を緩める列車 ひとつ、息をはく その瞬間が今日もやってくる ------------------------------ 2014.03.15 完結 ------------------------------ レビュー・感想・ファン登録などなどありがとうございます! 少しでも心に留めていただけたなんて光栄です…! ------------------------------

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop