お姫様の召使の言いなり
どうしてここの人は見た目と性格にこうも差があるんだろう。



黙ってれば本当に綺麗なのに。



“美人は三日で飽きる”なんて言うけど、飽きるとかの問題じゃない。



疲れる。



そんな疲れた心も、ここのバラたちに癒してもらえる。



こんなにたくさんのバラを、一体誰が手入れしているんだろう。



蕾?



…まさか。



蕾がそんなことをする人間には思えない。



植物にジョウロで水をあげながら優しく声をかける蕾を想像したら和んだ。



彼女の容姿ならきっと画になるほど似合うだろうに、もったいないことしてるよな。



本当に。



***********

目の前に良いにおいの紅茶が出される。



ひょっとして自分の分だけ用意するつもりなんじゃないかと疑っていたけど、そこまで酷いやつではなかったらしい。



「ありがとう」



お礼を言っても無視か…。



だまって紅茶を一口すする。



「あっち!」



「……バカじゃないの?」



向かいの席に座った蕾は、なんでもないように紅茶を飲んでいた。



なんで熱くないんだろう。



ひりひり痛む自分の舌とえらい違いだ。



「でも美味しいよ。ありがとう、蕾」



「あんたの方はインスタントだけどね」



なんてやつだ!



お礼なんて言うんじゃなかった。



というか聞きたくなかった。



なんで一緒に淹れてくれないでわざわざ別にするんだ…。

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