お姫様の召使の言いなり
それなのに、彼女はきょとんとした顔をしてからいきなり笑い出した。



“うふふ”なんて可愛いもんじゃない。



悪役みたいな豪快な笑い声。



「なんで笑うんだ?」



「だって…あんたの目にはそんな可憐でキュートでプリティーに写ったわけ?」



「べ、別にそういう意味で言ったんじゃない!」


確かに捉えようによってはそう聞こえたかもしれない。



いや実際可愛いし。



でも今のは性格に対して遠回しに言った皮肉について突っ込むべきだ。



そうでなくとも。



そこはぼくをからかうんじゃなくて、照れてもいいところだと思う。



なんでこっちが赤面しなきゃいけないんだ。



「蕾、ねぇ…」



「気に入らないなら他の呼び方考えるからいいよ!」



口元に手をやりながら、ぼくの付けたその名前を味わうかのように呟かれ、堪らなく恥ずかしくなった。



「ううん、別にいい。これはこれでメルヘン王国っぽいしね」



つまりぼくのネーミングセンスがメルヘンだってこと?



チラッとこちらを見て、またからかうみたいに笑った。



「いやメルヘン王国って何?」



つい大事なことを聞きそびれていた。



自分が今どこにいるか把握出来ていないなんて、恐ろしすぎる。



もっとも、もしこれが本当に夢の中ならそんなこと全然問題ないんだけど。



目をさましたら、いつもと同じ家の天井が広がって…とか、そんなオチなのかな。


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