緑の風と小さな光 第1部
第四章 響く歌声

温泉

セレ達は西の山岳地帯を歩いていた。

ここは薬草が豊富だ。ルルグの薬の材料も採取できた。

夏が近付いている。季節的にも薬草を集めるにはちょうどいい。

この頃の風の爽やかさがセレは好きだった。

「しばらく何処かに落ち着いてルルグの薬を作らなくちゃね。」

「そうだな。」

ピアリと旅を始めて2週間程が経った。

「ローエンとの約束まであと半月だな。」

「あたしはこのまま旅を続けるつもりよ。」

薬作りが終わる頃には結論を出さなければならない。セレは複雑な思いだった。

「人里まではまだ遠いのかな?」

エルグが言った。見渡す限りでは草と木と岩しかない。

「4キロ位先だな。」

セレが答えた。

人の多い集落などの気配ならこの位離れていても感じ取れる。

大きな低気圧などのエネルギーの塊ならもっと遠くてもわかるだろう。

「でも集落ではないけど何かエネルギーを感じる。地熱もあるけど、何だろう?水蒸気かな…」

少し歩いた所でその正体がわかった。

「温泉だ!」

ルルグとピアリは大喜びで駆け寄った。

「おい、入れるとは限らないぞ!」

セレが呼び止めたが、二人の耳には入らない。
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