緑の風と小さな光 第1部

旅立ち

数日後。

ルーチェとジンはハンの風車小屋にいた。

「おじいちゃん、あのね…」

ルーチェが、はにかみながらジンとの事を報告した。

「…そうか…ジンとね…」

ハンの顔がほころんだ。

「ハン、さん…」

ジンとハンが話すのは何年ぶりだろう。

「ハン、でいいよ。久しぶりだなぁ。ジン…いや、ラドニー。」

「…わかっていたのか…」

「ああ。ひと目でわかったよ。でも声をかけられなかった…。君が怒っているんじゃないかと思って…。」

「怒っている?何故?」

「…あの時、君が待っているのは分かっていたのに行かなかった…。」

「いつかそうなる事は覚悟していたよ。…君は今何歳?」

「もうすぐ60だよ。」

「僕はやっと20歳だ…いつまでも一緒に遊べるはず無いよ。怒るだなんて…。

それどころか、あの時狩人を追い払ってくれたのは嬉しかった。風車小屋を守る、って言ってくれたのも。」

「ジン…」

「僕はやっぱり人間と一緒にいたい。独りはつまらないよ。…ルーチェみたいに幸せをくれる人もいるしね。」

ルーチェは微笑んだ。

「おじいちゃんのクッキーとジンのクッキーは同じ味がするのよ。」
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