緑の風と小さな光 第1部

離宮

もう日が高くなっていた。

淡い水色の空がやたらに澄んで見えた。

樹木の間にようやく建物が見えて来た。茂みを抜けると一気に視界が開けた。

庭園だ。

かつてはさぞ美しかったであろう。

今では雑草が伸びてしまって、その中に埋もれる様にアイリスやユリが咲いている。

よく見るとバラの蔓が綺麗に伸びている。中程の池にも睡蓮の花が浮かんでいる。

誰かが時々手入れをしているのかもしれない。

庭園の中央に館が建っていた。

2階建てだが、立派な造りだ。王宮を小さくしたみたいだった。

「こんな森の奥にこんな立派な建物があるなんて、知らなかったわ。」

「知られない様にしていたのさ。元は先祖が狩りの時に使っていただけの所だ。」

門は閉じていたが、鍵はかかっていなかった。

許された者しか入れない様に門に魔法がかかっているのだが、本来セレはここの主だ。

難無く門扉を押し開けて庭園に入った。

真っ直ぐな石畳が蓮池の上を渡り、館の正面玄関まで続いている。





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