絶対に好きじゃナイ!

だけどそれでも不安になったりしないのは、社長の気持ちをいつも近くに感じているから。

言葉では足りないくらい、うんと大事にして伝えてくれるから。


「誕生日くらい、ちゃんとお祝いさせてください」

「ああ、わるかった」

「わたしが8歳年下だからって、嫌いになったりしないでしょ?」

「当たり前だ」

「30歳でも40歳でも、わたしだってちゃんと社長のこと……」


そこまではすらすら話せてたのに、次の言葉が意地に引っかかってなかなか外へ出てこない。

社長が小さく息を飲んだのがわかる。


言おう! 言っちゃおうよ!
わたしがちゃんと言わないから、社長だって不安になるんだよ!


スーツを握った手にぎゅっと力を込めてわたしが息を吸ったその瞬間。

待ちきれなくなった社長が声を出した。


「……俺のこと、なに?」


視界を塞がれて敏感になったわたしの耳は、その声に含まれた期待とちょっと楽しむような調子を敏感に感じとる。

今にも溢れそうになっていた2文字が、するりと意地っ張りの後ろに引っ込んでしまった。
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