絶対に好きじゃナイ!

社長の一挙手一投足、その全てにどきどきしちゃって、わたしの心臓はいつもかわいそうになるほど忙しい。



社長は言葉なんてつかわなくても、いとも簡単にわたしの鼓動を跳ね上げる天才だと思うの。



この間、こうして夜道をふたりで歩いたときもそうだったんだけど……

今みたいに手は繋がれたままだったけど、そのとき社長は電話中だった。


そのとき、たまたま反対側から酔っ払った男の人たちが歩いて来たの。
ちょっと若い感じの集団で、かなり酔ってるみたいだなあって思ってた。

狭い歩道だし、手を離して社長の後ろを歩こうと思ったんだけど。


そしたらわたしがそうするよりはやく社長が手を離して、そのままわたしの肩を抱いてぐっと引き寄せた。


騒がしい酔っ払いたちと上手くすれ違うと、社長はわたしを離してまたちゃんと手を繋ぎ直して。



まじめな顔して電話したまま、さも当然みたいにそんなことやってのけるから。

落ち着いた声で会話を続ける社長の隣で、わたしはひとりで勝手に暴れる心臓と格闘してたってわけ。
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