絶対に好きじゃナイ!

「もう! わたしのファースト・キス返してください!」


無理なこと言ってるのは自分でもわかってるけど。
でも、納得いかない!

21年間待ったはじめてのキスが、奪われた瞬間には相手も認識してない状態だったなんて。


キッと涙目で睨み上げたわたしを、社長が呆れたような目で見返す。


「なに無茶苦茶なこと言ってんだ。もらっちまったもんは仕方ねえだろ」

「は、はじめてだったのに!」


そう叫んだわたしを見て、今度はニヤリと意地悪そうに笑う。

その顔は、高校生だった"西城虎鉄"そのものだった。


「そうか、はじめてだったな。ごちそうさん。安心しろ、お前の"はじめて"はこれから全部俺がもらってってやるって決めた」


そう言った社長の顔は、すごく悔しいんだけど信じられないほどかっこよかった。

不敵に笑う、精悍な男の人。
さっきからわたしの心臓はぎゅうぎゅうと締め付けられて、とうとう故障してしまったみたい。
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