絶対に好きじゃナイ!

わたしは目の前の社長のネクタイを睨みつけながら、別のことを考えようと努力した。

でも、全然ダメ。


社長の背中には、きっとかなりの圧力がかかってるだろう。
わたしだって、たまたま社長に会わなければひとりでエレベーターに乗ってる。

ぎゅうぎゅう詰めのエレベーターでおじさまたちに押しつぶされながら、必死に踏ん張ってるんだから。


だけど今日は、そんなもの全部涼しい顔をした社長が背中に隠してしまった。
おかげでお気に入りのヒールで踏ん張る必要も、ときどき身体に触れる不快な手もない。

社長の大人な香りに包まれて、むしろ快適なくらいなんだから。




「あら、おはようございます。やっぱり社長と梨子ちゃんは仲良しね」


ふたりでオフィスに入って来たわたしたちをみて、紫枝さんがそう言った。


「ち、違いますよ。偶然下で会っただけですから」

「ふーん、偶然ね……」

そう言って意味深に笑った紫枝さん。


社長に視線を送ってるけど、社長は涼しい顔で知らんぷりしてた。
< 31 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop