絶対に好きじゃナイ!

「賢明な判断だ」


そう言って笑った社長が、ようやく手を離してわたしから離れていく。

さっきまで悲しい色をしていた世界が、少しずつ鮮やかに見えはじめた。



社長のお部屋は、想像していたよりも普通の部屋だった。

紫枝さんのお部屋のほうが、たぶん広くて贅沢だと思う。


だけどこの部屋にはセンスのいい家具やインテリアが置かれていて、抜群の配置ですっきりとして見える。
オシャレなのに、ムダがない。

社長が高級マンションとかに住んでたらどうしようかと思ってた。

もしそうだったら遠すぎて、もうわたしの知ってる虎鉄じゃないみたいだもん。


でもこの部屋は微かに社長の香りがして、はじめて来たのになんだか落ち着く。



しばらくして社長が戻って来て、タオルでわしゃわしゃとまだ少し湿った髪を拭かれる。

社長がリビングを出ている間に濡れた服を着替えた。


女の人の服とかあったらどうしようって思ったけど、貸してもらった服もお部屋にある服も、どうやら全部社長のものみたい。
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