ショコラノアール~運命の恋~
「いつまでそこにいるんだよ」

なお君見送ってから玄関に入らずぼんやりしていた私を、

見兼ねたのだろう、

陽君が声を掛けてきた。


「いいでしょ別に」


「よくねえよ、

 まだ2月なんだから寒いだろうが、

 風邪ひいたらどうすんだよ」


「ひかないもん」


「大人しく家に入れ。飯食おうぜ」


「お腹すいた」


「俺もだ」


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ママが出て行って


私は不登校になった。

なんとか学校に行っても、

教室は居心地が悪かった。

小学生なんて親の噂話や、

不確かな情報をうのみにして、

訳のわからない意地悪に発展してしまう。


『詩信ちゃんて、お母さん出て行っちゃったんだってね。

家のママ言ってたよ?

学校来ないで同情を煽って、

気を惹きたいだけなんじゃないかって』


『いいなあ、しのちゃん。あたしも学校さぼっても怒られない人になりたいなあ』


小学生の時

仲良しだと思ってたみんなが段々に離れて行った



陽君は最後まで離れては行かなかったけど、


『陽君かわいそう、詩信ちゃんの近くに住んでるだけなのに、

毎日お迎えなんでしょ?』


そんな噂話も聞こえた。

確かに、私のいる時、陽君はいつも機嫌が悪そうに眉間にしわが寄ってた。

『きっと迷惑に思ってるんだ』


私は、自分から距離を置くようになった。


陽君もそれが判ってか、必要以上に話しかけてはこなかった。


けれど、中学になって、陽君がすごく人気になってモテる様になって、

そのころから陽君は私を下僕のように扱った。


悲しいかな、

卑屈な女扱いはされても、一度もいじめの標的にはならなかった。


私は彼を嫌いつつも、

まさに卑屈な私はそこに自分の居場所を見出していた。





 
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