YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
それぞれの夢
「男って馬鹿だよね」
りみは容赦なくそう言った。ショートカットでボーイッシュな女の子で、希望梨とは中学からの親友である。背が高いのを活かして、バレーボール部に所属している。りみの視線の先には稔を中心として椅子を固めて男子がお笑い芸人のまね事をしたりしては大爆笑している。
「男の人って、いつまでも少年の気持ちをもってるんだと思うわ」
そうつぶやくのは、涼子。高校で知り合った希望梨のこれまた親友。いかにもお嬢様という感じで、綺麗な長い髪でお人形のような佇まいである。
「少年…ねぇ」
希望梨は長年の天敵を見た。全く、同じ高校に進学しただけでなくなぜ三年間同じクラスにならなくてはならないのだ。小中の間は、小2以外ずっと違うクラスだった。クラス編成で先生達が気を使ったに違いない。
予鈴がなり、りみと涼子はまた休み時間にね、と教室を離れた。何で親友とはクラスがバラバラなんだ…。男子達が椅子を戻すガタガタいう音が響く。
三年生に進級して二週間が過ぎた。部活をしてこなかったし、今のクラスにはまだ仲良しと呼べる人はいなかった。
担任はおじいちゃん先生だしな…などと不届きな考えが過ぎる。
ベテランの先生なのだが、すぐ話が脱線して授業が進まない。定年直前の先生なのだが、戦後生まれである。なのに、すぐ戦時中の話になる。先生は10人兄弟の末っ子で、1番上のお兄さんだかお姉さんだか忘れたが、とにかく兄弟から散々苦労話を聞かされたらしい。
そのおじいちゃん先生が英語担当なのも驚きである。戦時中の話になると、必ずギブ・ミー・チョコレートが話題に上がる。
先生は米兵にチョコレートをねだった事はないのだが、すぐその話題になる。
戦争の恐ろしさを風化させてはいけないという思いがあるのだろう。
希望梨達は平成生まれだから、「昭和」を知らない。映像でしか見た事がない。「昭和」を忘れちゃいけないんだと先生はいつも力説する。
先生の言わんとする事は分かる。
−しかし、授業が他のクラスに比べてかなり遅れているのである。やはり授業はきちんとしてくれないと困る。大学進学、就職を控えた大事な一年なのである。希望梨の席は窓際で、校庭を見渡せた。桜だいぶ散っちゃったな…と考えて不吉だ!と思いそれ以上考えないようにした。ドアがガラッと開く音がした。
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