YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
ばあちゃん狂想曲(ラプソディ)
「で〜しゃばりお〜よねに手を引かれぇ〜、ケイちゃんはターゴローのぉ、嫁に来ぃた〜」
ミヨはお茶しか飲んでいない。
「母さん、その替え歌妙にリアルだからやめてよ」
ケイはため息をついた。
「よねさんが今も居たらねぇ…。色々話聞いてもらいたかったねぇ」
「お義母(かあ)さんと仲悪かったくせに」
「よねさんは私より年上だったからね。世代の違いかね」
田吾郎はよねの末の子で、ケイはミヨの最初の子である。
「世代って大袈裟な」
ケイがそう言った時、ケイの携帯の着うたがなった。
「なんだい、うるさい音だねぇ」
ミヨは顔をしかめる。
「あ、父さんからだわ」
「あたしゃいないよ。聞かれてもいないって言っといて」
ミヨは身軽に椅子から降りて階段を降りて行った。本屋…いや、孫の様子を見に行くのだろう。
「もしもし、父さん?あら、久しぶり…」
ケイは努めて普段の声を出した。

「ケイがね、希望って書いてのぞみって名前をつけたかったんですよ」
縁側で、よく冷えた缶ビールをグイッと飲んだ。義姉が冷やしてくれていたものだ。
「ばあちゃんの『梨』ってつけてくれって遺言を守った訳ね」
義姉は隣に座って、烏龍茶を飲んでいた。
「長女には希望…のぞみって決めてたんですよ。ばあちゃんの遺言にしても、もう決めてたらいいとは書いてありましたけどね」
「ばあちゃんの願いを聞いた訳ね」
「第二候補が美沙だったんでね、じゃあ梨をつけて美沙梨、みさりにしようかと」
長兄が食べ残した枝豆をつまむ。
「美沙ちゃんだけでばあちゃんとの約束果たしたでしょうに」
義姉は微笑んだ。
「まぁ、そうなんですけど次女、三女と皆女の子で…。三姉妹揃いの名前にしたかったし。麻央は僕がつけたかった名前でね、やっぱり梨をつけて麻央梨…まおりで」
「さしずめ初恋の人の名前とかでしょ」
義姉の言葉に、田吾郎のビールを飲む手が止まった。
「あらやだ、図星?大丈夫、誰にも言わないから」
義姉は田吾郎の肩をビシッと叩いた。田吾郎はゴホンと咳をしてから
「…で、三人目も女の子だったからケイの希望叶えたくてね。」
それを聞いて義姉はクスッと笑った。
「あ、イヤ、洒落のつもりじゃないですよ。」
田吾郎は慌てて手を振る。
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