あの夏のキミへ
学校から少し歩いたところには若葉駅という駅がある。

駅の名前からしてここは、若葉町という。

この近辺では一番発展している町だと思う。

都市って言うほどではないが、毎日多くの通勤、通学者たちが行き来する。

しかし、意外にもここは海から比較的近い。

だからといって港町というわけではないのだけれど、電車に1時間ほど乗れば行ける距離にある。

自殺しにきたといっても、学校にはバスで通うため、財布だけを掴んできていた。

遊びに行くような友達も目的もないだめ、お金は貯まる一方だった。

だから、電車でここから1時間ぐらいかかる海までを往復するお金は十分にあった。

わたしたちは駅まで歩く間、一度も会話を交わさなかった。

だって、何を話したらいいのかわからないもの。

まだ知り合ってから10分くらいしか経ってないのだから、無理もないのだけど。

しばらくすると駅につき、切符を買った。

ホームは夏休みということもあり、親子や家族連れでにぎわっていた。

それとは反対に、シャツの袖をまくって暑そうにしているサラリーマンや、部活帰りの学生などでも溢れかえっている。

時折、楽しそうにしゃべくりながら電車から降りてくる女子高生たちとすれ違ったりもしたが、わたしにとってそんなこと、経験したこともないし、したいとも思わなかった。

待っていると電車はすぐにきた。

車体はレトロな赤色で、真ん中にクリーム色の太いラインがはいっていた。

ところどころ色が剥がれていて、けして新しいとは言えなかった。

「行こう」

「えっ、あ、うん。」

プシューっと音がして、電車の扉が開いた。

わたしは彼の後に続いて乗りこんだ。
< 14 / 135 >

この作品をシェア

pagetop