桜*フレーバー

お互いに何も言わず沈黙が続く。

あたしから切り出した方がいいのかな。そう思って口を開いた。


「いつから?」

「え?」

「彼女と」

「ああ……」


一呼吸おいてから、太一は彼女との関係を説明してくれた。

あたしはそれをぼんやりと、ただ黙って聞いていた。


彼女とは予備校で一緒だった。自然と仲良くなり、夏期講習の途中で告白された。

つきあってる子がいるからと、断ると、『知ってる。ふたりの関係を壊すつもりはない。ただ、自分の気持ちを知って欲しかっただけだから』と遠慮がちにそんなことを言っていたらしい。優しい子なんだと、太一は目を細めて言っていた。

その後は友達として仲良くしていたが、ふたりで何度か会っているうちに、太一も彼女にひかれていった。


「ようするに、その子が本命になったってこと?」

「……ごめん」


心変わり。こういうのって、きっとよくあることなんだろうな。

彼氏に浮気されて泣いてる友達を何人も見てきたし。
女の子側に好きな人ができたパターンもある。

むしろ4年半もそういうことがなかったあたし達の恋は、ある意味奇跡みたいなものだったのかもしれない。


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