桜*フレーバー
「そっか、ま、いいけど。で、オレのせいで、撮影が止まって、オレらのクラスは後回しにされて。そしたら周りのヤツらが、騒ぎ出して。『泣き虫~』ってからかうヤツもいれば、怒りをぶつけてくるヤツもいるしで、泣き止もうと頑張るんだけど、もう全然ダメで。先生も困り果ててた。そしたらひとりの女の子が校庭の隅にテケテケって駆けていったんだ。なにするんだろ? って、みんなが注目してたら、桜の枝をブチッって……」


「あ……思い出してきたかも」


あたしの中にもだんだん当時の記憶が蘇ってきた。


「彼女、オレのところまで戻ってくると、『はい。あげる。キレイでしょ?』って、オレの胸ポケットに桜を刺してくれたんだ。けど、そのせいでその子、先生からは怒られるは、両親は平謝りするわで……結構な騒ぎになってた。けど、当の本人は全然気にしてない様子でさ、オレの方見て、指でピース作って笑ってるんだ。そしたら反省してない、って、また先生に怒られて……ぷっ」


もうたまらないとばかりに怜央は笑い出す。


「あはは……。そんなこともありましたね……」


完全に当時を思い出したあたしは、恥ずかしさでいっぱいになる。

あの頃のあたしは、女の子らしさなんてかけらもなくて、まさに野生児って感じだったんだよね。


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