オレ様探偵とキケンな調査
「こんな風に見栄とプライドだけで争う2人なんて見たくないっ。帰って…帰ってよッ!」


「…わかったよ。でも、椿さん。あなたはボクを選ぶべきだと思うよ?」


そう言って颯太くんはあたしの髪にキスを落として帰って行った。


「帯金さんも…」


「椿…」


「ねぇ、見えてる…?」


「何が、だ?」


「あたしの事、ちゃんと見えてる!?颯太くんと張り合うんじゃなく、ちゃんと真っ直ぐあたしを見てくださいっ」


「…悪かった。でも、オレは本当に…!」


「いやっ!聞きたくないっ」


「わかったよ。今日は帰る。明日、ちゃんと聞いてくれるか…?」


「颯太くんと仲直りするまで、あたし、何も聞かないからっ!」


帯金さんはあたしの肩に手をやり、大きく息を吐いて部屋を出て行った。


わかってる。


帯金さんと颯太くんは、同じようで全く違う。


あたしを想ってくれてるってことだけは共通だけど、背中合わせで交わることのない2人。


でも、そんな2人があたしは好き。


それぞれに対する“好き”の想いは違うけど、大好きだから傍にいたいし、仲良くしてほしい。


あんな風に理屈で愛を固めてほしくなんて、ない。


「…っ…っ…バカッ!」


あたしはキッチンに座り込んだまま、散らばったままのコーヒー豆をただ見つめていた。
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