愛が冷めないマグカップ
助手席から改めて見る小林部長の横顔はやっぱり素敵で、狭い車の中で聞く小林部長の声はやっぱりハスキーで少し色っぽい。あゆみはワンピースの裾をぎゅっと握りしめながら何を話せば良いか考えた。他愛もない会話ほど難しいものはないなとあゆみは思った。仕事の話ならいくらだってできるのに。
「あの…、小林部長の趣味ってなんですか?」
「はぁ?なんだその質問。そんなの知りたいのか?」
「し…知りたいですよ」
あゆみが小林部長のことで知っているのは、片付けが極端に苦手なことと、少し甘めでクリームたっぷりのコーヒーが好きだということくらいだ。
「趣味とか、好きな色とか、好きな食べ物とか、好きなテレビ番組とか…、そういうの知りたいって思うのおかしいですか?」
あゆみは、真剣な表情で言った。
なんでも知りたい。小林部長のことなら何でもいいから教えて欲しい。
「面白いやつだな、お前は」
「わたしは真剣です!まずは趣味だけでも教えて下さい」