生意気なキス
常連のお客様の接客も終わり、今年入社したばかりの後輩が休憩から戻ってきたので、入れ替わりに午後の休憩に入る。


お客様に化粧品をすすめる立場の私のメイクが崩れていては話にならないので、この仕事をしていれば、当然自分の身だしなみにも気を使わなければいけない。

日々のスキンケアを怠ることなく、肌の調子を整えておくのは大前提として、お昼休憩も午後の休憩時間も、ほとんどはメイク直しに使う。





休憩室の椅子に座り、早速化粧ポーチを取り出す。

ティッシュで軽く油を押さえた後で、お粉をはたいて、ポイントメイクを直す。

最後に、丁寧にリップラインを引いてから、レッドブラウンの口紅を塗る。



仕事以外のプライベートの時も、落ち着いた色の口紅しか使わない。

グロスは元々苦手だし、もう二十代後半なのであまり派手なものも使いたくない。


これらのメイク道具から普段のスキンケアまで一式、自社の化粧品を使うことを指定されているので、それを使っている。

自社の化粧品が好きなので、それはいいのだけれど。


最近は新商品が出ても、何を使っても同じような気がして、入社した頃のような、化粧品を試してときめく気持ちが薄れてしまった。

< 2 / 29 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop