バニラ
-------

「ご馳走様でした。」

いつものように、戴くまかない。

あの日以来、野菜の料理が一品多くなった。

『栄養の事も考えないといけませんね』
あの時和臣さんはそう言っていた。

ヒジキや温野菜の小鉢を戴くたびに、
私の事を考えてくれてるんだと感じて、胸がふわりと温かくなる。

下げた器を片付けながら、
ちらりと盗み見る和臣さんの顔。

コーヒーの焙煎機を楽しそうに手入れしながら、
常連の徹さんと話をしている。

ズキン


……っ

ああ、駄目だ、
お客さんに向ける笑顔でさえ

切なくて悲しくなる。

こんなに傍にいても、
手を伸ばせない弱虫な自分。


嫌になる。









私の視線に気がついたのか、
笑顔で徹さんが話を振って来た。

「竹ちゃん!もう大丈夫なの?」


「ああ、ハイ。

 この間はご迷惑をおかけしました。」

「全く参ったよ。

 何もできない俺を残して、
 和さん飛び出して行っちゃってさ。
 
 まあ、臨時休業の札は出しちゃったけどね。

 二人は、あれでしょ?

 一緒になるんでしょ?

 いつ頃?」



「は?」





あまりにも突飛な質問に
面食らった私は真赤になって言葉を失った。


「何言ってるんですか徹さん!

 そんなわけないでしょう!」


和臣さんは、真赤になって慌てて反論する。

!


うっ……


そうなのだけど、


そうなんだけど、

確かにそんなわけないのだけど
そんなにムキになって否定されると、

少し傷つくな……





< 12 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop