愛されることの奇跡、愛することの軌跡
私、ドキドキしてるの健吾さんに伝わっちゃってないかなぁ。

健吾さんは、何の香水をつけてるんだろう。
柑橘系で少し甘い匂い。

この匂い、好きだなぁ。

私の背中に回る手も、腕も、そして体全体の先生の体温が心地よい。

『玲奈』

先生は体を離し、その代わり両手を私の肩に置いて私の名前を呼んだ。

『君に、ひとつ確認しておきたいんだ』
「なぁに?」

健吾さんは真っ直ぐ私を見る。だから私も視線をそらさないで返事をした。

『俺は、教師だ。君の担任だ。しかし、そんな立場になる前から今、そしてこの先もずっと、君しか見えないと感じてしまうダメな男だ』

健吾さんの黒い瞳が光っていたのが、少し輝きが弱くなったような気がした。
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