愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「いいなぁ、大人は。余裕があるよね」
『そう見える?でも、ほら』

健吾さんは私の手を取って自分の胸に当てた。

健吾さんの心臓の鼓動が私にも感じ取れた。

結構、早いよ。
私には負けるけど。

『俺だって、かなりドキドキしてるんだぞ。でもこれで…自信が少し出た。あの時、玲奈にハンカチあげて良かった』
「健吾さんは女の子には苦労してなさそうなのに。ハンカチがなくたって、健吾さんのことを忘れないよ」
『いや、俺の自己満足でもあるんだ。玲奈が俺に惚れますようにって。現に、玲奈は初対面じゃない俺をすっかり忘れていたし』

健吾さんは寂しそうな顔をしたけど、すぐに引き締めた表情に変わった。
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