愛されることの奇跡、愛することの軌跡
読み終わったところで、ちょうど健吾から


"外の駐車場にいる"


とメールが来たので、私は図書館を出た。


『どうした?緊張してる?』


「うん。それもあるけど…」


私は、健吾に今読んだ恋愛小説の話をした。


『アハハハ。俺たちと重ねてるの?』


小説に出てきた兄妹は、母親が違う兄妹で父親は大企業の社長という設定だった。


『俺たちは兄妹ではないし、この先だって関係をもっともっと育むし、育みたいと強く望んでる。だからこそ、今回の話はもう、本当に怒り以外の何物でもないんだ』


健吾は運転してるから前を見ながらだけど、力強い言葉で私に語りかける。


『でも、今回の話が出たのは俺が今までしっかりしていなかったら、つまりは"身から出た錆"だし、玲奈には何と言ってお詫びしたら許してもらえるのか。一番は、結果を残すことだろうな、と』


「結果?」


『今回の話をご破算にすること。情けない話なんだけど、俺は父親と過ごした時間があまりにも短くて、父親の性格や思考が全く読めないんだ。だから、言葉ではっきり確認したい。あの父親は自分に用事がない限り、俺が頼んでもいつも会ってくれないんだよ。今回は"会って欲しい女性がいる"と伝えて、ようやくアポイントが取れた』
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