愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『健吾さんの時はどうだったの?』


それまでリビングのソファーに座っていた陸が、ダイニングにいる私達のところに向かいながら聞く。


『玲奈ほど、それまでの勉強の蓄積がなかったから、ギリギリまで詰め込みしてたよ。お陰で一次選抜もその後の試験もギリギリ。前期で受かったけど』


「受かったならいいじゃん。私、当日緊張しちゃいそうで」


『行くよ、試験会場の前まで』


「本当?」


『あぁ。でも勘違いするなよ。俺は8人中3人がうちのクラスだから行くの。教師として行くだけだから』


「それでも、嬉しいよ。緊張が少しでも和らぐといいなぁ」


私は、間近に迫った大きな試験に、健吾の力で乗り切ろうと、本気で思った。


健吾のお陰か、第1段階選抜をクリアして、前期日程にて試験を終えた。


東都大の校門前で、健吾が待っていてくれた。


「全力は、尽くしたよ」


『そうか。ならいいんじゃない?』
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