愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『玲奈、大学卒業するまでに何かやりたいことが具体的に見つかるといいね』


お母さんはそう言うけど…


「健吾の役に立てる人間になることが、私の夢だから」


どうしたら役に立てるのか、早く見つけなきゃ。


夕飯を食べ終えると、健吾が


『すみません、玲奈、お借りしてもいいですか?』


『どうぞどうぞ。ずっと返してもらわなくてもいいのよ~』


お母さん、何てことを。


健吾が私を連れてきたのは、結局2階の私の部屋だった。


後ろ手でドアを締める私。


『本当は、俺の家に玲奈を閉じ込めて、ベッドの上でたっぷりお祝いをしてあげたいところなんだけど』


健吾がイタズラっ子のように笑いながら言うもんだから、凄く恥ずかしい。


『けじめ、つけなきゃ』


健吾が窓の外を眺める。


『今月いっぱいは俺はナルガクの教師だし、玲奈は卒業式が終わったとはいえ、やはり今月いっぱいはナルガクの生徒の扱いだ』


「うん」


けじめつけるって、何を今更。
< 485 / 548 >

この作品をシェア

pagetop