愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「三浦くん」


三浦くんは、返事の代わりに私をじっと見た。


「人を好きになることが自由なのは分かってる。だから、三浦くんの願いを叶えてあげられないのが心苦しいの。でも、その心苦しさを越えるくらい、大好きな彼を悲しませたくない気持ちの方がすごく強いの」


『金澤…』


「私、彼を思うといつだって笑えるし、泣ける」


『じゃぁ今は、彼氏を思って、笑える?泣ける?』


それは…私は迷わず答えた。


「泣くよ。三浦くんの思いに応えられなくて心苦しいのに、彼がそばにいないから、寂しくて」


私は、なるべく人には心が傷ついて欲しくないと思う。


だけど、健吾の存在で私は大きく変わった。


だからと言って人の心を傷つけるような身の振り方をしていいと言う理由にはならない。


「三浦くんにも、三浦くんを好きになった人が三浦くんの想い人になるような、奇跡の出会いがあることを願うよ」


三浦くんは暫く俯いていた顔を上げた。
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